原状回復ガイドライン(全19問中3問目)

No.3

賃貸住宅における原状回復に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
令和5年試験 問11
  1. 賃貸人が敷金100万円から原状回復費用として70万円を控除して賃借人に敷金を返還した場合において、賃借人の故意過失による損耗・毀損がないときは、賃借人は、敷金全額分の返還を受けるため、少額訴訟を提起することができる。
  2. 原状回復にかかるトラブルを未然に防止するためには、原状回復条件を賃貸借契約書においてあらかじめ合意しておくことが重要であるため、原状回復ガイドラインでは、賃貸借契約書に添付する原状回復の条件に関する様式が示されている。
  3. 原状回復費用の見積りや精算の際の参考とするため、原状回復ガイドラインでは、原状回復の精算明細等に関する様式が示されている。
  4. 民法では、賃借人は、賃借物を受け取った後に生じた損傷(通常の使用収益によって生じた損耗や賃借物の経年変化を除く)がある場合において、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものである場合を除き、賃貸借の終了時に、その損傷を原状に復する義務を負うとされている。

正解 1

解説

  1. [不適切]。少額訴訟手続は、60万円以下の金銭の支払を求める場合に限って利用できる、簡易裁判所における特別の訴訟手続です(民訴法368条1項)。本肢の場合、賃借人は、敷金全額分(100万円)の返還を受けるための訴訟を提起したいので、少額訴訟制度を利用することはできません。
  2. 適切。原状回復に係るトラブルを未然に防止するため、賃貸人は賃借人に対して、明渡しの際の原状回復の内容等を具体的に契約前に開示し、賃借人の十分な確認を得たうえで、双方の合意により契約事項として取り決める必要があります。原状回復ガイドラインでは、賃貸借契約書に添付する原状回復の条件に関する様式(別表3)が例示されており、原状回復の条件、賃貸人/賃借人の修繕分担表、賃借人の負担単位、工事単価の目安などを記載するようになっています。
  3. 適切。原状回復ガイドラインでは、原状回復の精算明細等に関する様式(別表4)が例示されており、設備や部位ごとに、修繕の内容、単価、量、金額、経過年数、賃貸人/賃借人の負担割合を表形式で記載するようになっています。
  4. 適切。賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常損耗と経年変化を除く)がある場合、賃貸借が終了したときに、その損傷を原状に復する義務を負います。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りではありません(民法621条)。
したがって不適切な記述は[1]です。