原状回復ガイドライン(全19問中4問目)

No.4

「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改定版)」(国土交通省住宅局平成23年8月。以下、各問において「原状回復ガイドライン」という。)に関する次の記述のうち、適切なものはいくつあるか。
  1. 借主の負担は、建物、設備等の経過年数を考慮して決定するものとし、経過年数による減価割合は、償却年数経過後の残存価値が10%となるようにして算定する。
  2. 中古物件の賃貸借契約であって、入居直前に設備等の交換を行っていない場合、入居時点の設備等の価値は、貸主又は管理業者が決定する。
  3. 借主が通常の住まい方をしていても発生する損耗であっても、その後の借主の管理が悪く、損耗が拡大したと考えられるものは、借主が原状回復費用を全額負担する。
  4. 経過年数を超えた設備等であっても、継続して賃貸住宅の設備等として使用可能なものを借主が故意又は過失により破損した場合、借主は新品に交換する費用を負担する。
令和4年試験 問10
  1. なし
  2. 1つ
  3. 2つ
  4. 3つ

正解 1

解説

  1. 不適切。経過年数による減価割合について、2007年以前は税法の減価償却を参考に償却年数経過後の残存価値を10%として賃借人の負担を計算していましたが、減価償却の方法が改正されたことを受けて、現在は残存簿価が1円になるようにして賃借人の負担を算定します。
  2. 不適切。原状回復ガイドラインでは、賃借人の負担割合を経過年数のグラフを使って算定しますが、入居時点の設備の価値(グラフの出発点)をどこにするかは、契約当事者が確認のうえ、あらかじめ協議して決定することが適当とされています。貸主や管理業者が一方的に決めるわけではありません。
  3. 不適切。借主の管理が悪く、損耗が拡大したと考えられるものは、借主が原状回復費用を負担するのは正しい考え方ですが、経年劣化・通常損耗を超えて建物価値が減少した部分を借主の負担とするというのが原則的な考え方です。経年劣化・通常損耗部分は貸主の負担、それ以外の部分が借主の負担となります。借主が常に全額負担となるわけではないので本肢は誤りです。
  4. 不適切。経過年数を超えた設備等は、グラフ上は価値が0となるため原状回復に伴う賃借人の負担はグラフ上はゼロとなります。しかし、賃借人は善管注意義務を負うため、これに違反し故意又は過失により使用可能な設備等を破損させた場合、経過年数を超えた設備に対しても修繕等の費用を負担することになります。ですが、あくまでも原状回復なので新品に交換する義務はなく、本来機能していた状態まで戻す費用を負担すればよいとしています。
したがって適切なものは「なし」です。