貸主・借主の権利義務(全12問中6問目)

No.6

賃貸物件の借主の義務に関する次の記述のうち、適切なものはどれか。
令和元年試験 問17
  1. 貸主が借主の用法遵守義務違反を理由に損害賠償請求をする場合、賃貸物件の返還を受けた時から1年以内に行使しなければならない。
  2. 親族が貸主である賃貸借契約の場合、借主は、賃貸借契約終了後、賃貸物件返還までの間、同物件を自己の財産のためにするのと同一の注意義務をもって保管すれば良い。
  3. 賃貸物件に対して権利を主張する第三者が存在する場合、借主は貸主がその事実を知っていたときでも、貸主に対して通知する義務を負う。
  4. 貸主が賃貸物件の保存を超える行為をしようとする場合でも、借主はこれを拒むことができない。

正解 1

解説

  1. [適切]。賃貸借の借主の契約に反した使用により生じた損害賠償請求権については、貸主への返還日から1年が除斥期間となります(民法600条)。
  2. 不適切。借主は将来的に賃貸物件を返還する義務を負っていますから、借主には特定の目的物の引渡しに関する善管注意義務が適用されます(民法400条)。これは自己の財産と同一の注意義務より重く、受任者と同様な職業・地位にある者に対して一般に期待される水準の義務です。
  3. 不適切。賃貸物について権利主張する第三者があるときは、借主は貸主にその旨を通知する必要があります。ただし、貸主がその事実を知っているときは、借主があえて通知をする義務はありません(民法615条)。
  4. 不適切。借主は貸主が行う建物の保存行為を拒むことができません(受忍義務)。しかし、本肢は保存を超える行為(例えば、壊れたところを修繕するなどの保存を超える大規模リフォーム等の変更行為など)ですので、借主の事情に応じて拒むこともできます(民法607条)。
したがって適切な記述は[1]です。