貸主・借主の権利義務(全12問中11問目)

No.11

賃貸借契約における修繕義務に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
平成27年試験 問17
  1. 借主が雨漏りを修繕し、その費用を貸主に請求したにもかかわらず、貸主が支払わない場合には、借主は賃貸借契約終了後も、貸主が修理費用を支払うまで賃貸物件の明渡しを拒絶することができる。
  2. 借主が賃貸物件に給湯設備を設置し、賃貸借契約終了時に貸主に対して買い取るよう請求した場合には、貸主が承諾したときに売買契約が成立する。
  3. 貸主の修繕義務は、賃貸借契約締結後に生じた破損に限られるため、借主が入居する以前から賃貸物件に雨漏りが発生していた場合には、貸主は借主に対して修繕義務を負わない。
  4. 貸主の修繕義務は、賃貸物件である貸室についてのみ生じ、共用部分については生じない。

正解 1

解説

  1. [適切]。雨漏りの修繕は、目的物を使用収益する上で必要な費用ですから必要費に該当し、支出後すぐに貸主に請求できます。貸主からその費用が支払われない場合、借主は賃貸借契約終了後に留置権を行使し、貸主が修理費用を支払うまで賃貸物件の明渡しを拒絶することができます。ただし、建物を留置していた期間の賃料相当額は貸主に返還しなければなりません。
  2. 不適切。給湯設備は造作買取請求権の対象になるとされています。造作買取請求権は、当事者一方の意思表示によって法律関係が変動する「形成権」であるため、請求した時点で段階で売買契約が成立します。貸主の承諾を必要としません。
  3. 不適切。貸主は借主に対して建物を使用収益させる義務を負います。雨漏りは建物の使用収益に支障をきたす状態であると言えるので、借主が入居する以前から賃貸物件に発生していた雨漏りについても、貸主は借主に対して修繕義務を負います。
  4. 不適切。貸主の修繕義務は、貸室である専有部分のみではなく、使用収益に不可欠である共用部分についても発生します。賃貸住宅で言えば、廊下や階段、エレベーター、エントランスホールや建物に付随する設備などが共用部分に該当します。
したがって適切な記述は[1]です。