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賃貸不動産経営管理士の難易度

1. 試験制度の変遷

賃貸不動産経営管理士の資格の始まりは、平成23年から始まった賃貸住宅管理業の登録制度と時を同じくしています。当初は、2日間の基本講習および講習後の試験に合格して賃貸不動産経営管理士資格が得られる方式となっていましたが、平成25年から現行のような全国統一試験のスタイルとなり、また平成27年からは試験問題および正解番号が公開されるようになりました。さらに、令和2年度からはこれまでの90分40問の試験から120分50問の内容となります。これは、宅地建物取引士試験や管理業務主任者試験、マンション管理士試験と同じ試験形式であり、明らかにこれらの資格を意識したものだと思われます。

2. 合格率推移

合格率は年を追うごとに低下しており、全国統一試験開始直後の2年間はいずれも合格率が70%以上でしたが、平成27年以降は50%程度、令和以降は30%前後の合格率となっています。徐々に難化させていき、最終的には宅建士等のように20%以下に絞っていこうという試験主催者の意図が見えます。令和2年度試験についてはコロナウィルス感染防止というマイナス要因と「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」の成立に伴う国家資格の期待がプラス要因がどのように作用するかの予想が難しいところですが、これらの要因のプラスマイナスゼロと仮定し、令和元年度の時と同様約5,000人の受験者が増加、そして合格者は例年並みの9,000人前後としますと、合格率は30%前後に下がると予想されます。

3. 難易度

他の資格試験(宅地建物取引士・管理業務主任者・マンション管理士)と比較では、表のとおり合格点が約36点となり、他の資格試験にほぼ類似した合格ラインではありますが、合格率でみると賃貸不動産経営管理士が一番高く、試験としての難易度はやや低めであると考えてよいでしょう。
令和5年度の関連資格試験の結果比較
受験者数合格者数合格率合格点
賃貸不動産経営管理士28,299人7,894人27.9%36点
宅地建物取引士233,276人40,025人17.2%36点
マンション管理士11,158人1,125人10.1%36点
管理業務主任者14,652人3,208人21.9%35点
しかしながら、この資格の受験者は業界に無関係の人も多い宅建士と異なり、やはり不動産賃貸業や賃貸住宅を管理する不動産管理業の方が中心でしょう。そして、この中には上記の関連資格の保持者も多くいると考えられます。合格率は30%弱と高めですが、不動産業界で実務を行っている受験者が多い中での数値と考えてみる必要があるでしょう。

また、ここ数年の問題形式の傾向を見ますと、試験の難易度を上げる個数問題がそれまでの3問から令和元年度には倍以上の7問に増えています。個数問題の増加は試験全体の難易度上昇に直結し、令和2年度においては前述したように合格率が下がり、つまりは難易度が逆に上がる傾向を踏まえると、今後も個数問題が増加していくのではないかと考えられます。受験者としては曖昧な知識では対応できなくなりますので、しっかりと学習する必要があります。

問題形式による難易度は以下のとおりです。
四択問題
4つの選択肢の中から、正しい選択肢、または誤っている選択肢を一つ選ぶ問題形式で、正誤が明らかな選択肢を見つけられれば、すべての選択肢を理解していなくても正解できます。
組合せ問題
4つ(それ以上)の選択肢の中から、正しい選択肢、または誤っている選択肢の組み合わせを答える問題形式で、正誤が明らかな選択肢を軸にある程度、正解を絞り込むことができます。
個数問題
4つの選択肢の中から、正しい選択肢、または誤っている選択肢の個数を答える問題形式で、すべての選択肢の正誤を判断する必要があります。

4. 試験範囲

試験範囲は、ほぼすべての問題が「賃貸不動産管理の知識と実務」という、実質的な公式テキストから出題されるといっても過言ではありません。稀に選択肢の文章がこのテキストに掲載されていない民法や宅建業法などの法律の条文から出ることもありますが、感覚的には多くても試験問題全選択肢のうちの2~3個といった頻度です。この公式テキストの内容は満遍なく出題されますが、その中でも、「第1編 賃貸住宅管理業者登録制度」「第5編 賃貸借契約」「第6編 建物管理の実務と賃貸借契約の管理」「第7編 建物・設備の知識」からの出題が多く、できれば公式テキストを準備し、この部分を重点的に復習するのが効率的と思われます。この部分の範囲が試験全体の7割程度になり、合格ボーダーラインの点数になります。

5. 免除制度

また、賃貸不動産経営管理士協議会で、試験問題の免除制度が設けられています。賃貸不動産経営管理士講習の修了者は試験問題の一部(5問)が免除となります。2019年度までは連続2日間のコースでしたが、2020年度から事前学習+講習1日のコースとなり、スケジュール調整もしやすいと思いますので、合格への近道として利用してみるのも作戦のひとつとなります。別途受講料とテキスト(前述した公式テキスト)の購入が必要です。開催時期は8月~9月ですが、すぐに満席となるので、早めに申し込むことをお勧めします。受講生もほぼ欠席者はおらず、みな熱気にあふれていましたので、分からない論点などを近くに座った受講生と会話してみるのも実力アップにつながると思います。なお講義はビデオ視聴がメインだったのがやや残念でしたが、今年からは日程も短縮されており、内容は若干変わるかもしれません。

なお、宅建士のように免除される問題は決まっておらず、試験本番になって知らさせます。過去6年の傾向を見ると倫理憲章や建物の知識の分野が免除対象となることが多いようです。