賃貸不動産経営管理士過去問題 令和4年試験 問43

問43

賃貸取引の対象となる物件において人が死亡した場合の宅地建物取引業者の義務に関する次の記述のうち、「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」(国土交通省不動産・建設経済局令和3年10月公表)に照らして適切なものの組合せはどれか。
  1. 取引の対象となる不動産における事案の有無に関し、宅地建物取引業者は、原則として、貸主・管理業者以外に自ら周辺住民に聞き込みを行ったり、インターネットサイトを調査するなどの自発的な調査を行ったりする義務がある。
  2. 入居者が入浴中に溺死したときは、宅地建物取引業者は、次の賃貸借取引の際、原則として、借主に告知する必要がある。
  3. 入居者が死亡した場合、宅地建物取引業者は、死亡時から3年を経過している場合であっても、借主から事案の有無について問われたときは、調査を通じて判明した点を告知する必要がある。
  4. 宅地建物取引業者が人の死について告知する際は、事案の発生時期、場所、死因及び特殊清掃等が行われた場合にはその旨を告げるものとし、具体的な死の態様、発見状況等を告げる必要はない。
  1. ア、イ
  2. ア、エ
  3. イ、ウ
  4. ウ、エ

正解 4

解説

  1. 誤り。宅地建物取引業者には、重要事項を説明する上で物件に対する調査義務があるものの、人の死に関する事案について自発的に調査を行うことは宅建業法では求められていません。しかし、取引の相手方の判断に重要な事実について知っているときは、相手方にその事実を伝える義務があります。
    本ガイドラインでは、売主・貸主・管理業者等に対して告知書等で過去に生じた事案について照会することにより、本調査義務を果たしたこととするとしています。このため、取引の対象となる不動産における事案の有無に関し、宅地建物取引業者は、原則として、売主・貸主・管理業者以外に自ら周辺住民に聞き込みを行ったり、インターネットサイトを調査するなどの自発的な調査を行ったりする義務はありません(ガイドライン3(1))。
  2. 誤り。人の死に関する告知義務の対象となるのは、原則として過去3年以内に、①自然死以外の死が発生した場合、②特殊清掃等が行われる死が発覚した場合です。よって、自然死については特殊清掃等が行われた場合を除き、告知する必要はありません。また、事故死に相当するものであっても、自宅の階段からの転落、入浴中の溺死、転倒事故、食事中の誤嚥など、日常生活の中で生じた不慮の事故による死については、そのような死が生ずることは当然に予想されるものであり、これが買主・借主の判断に重要な影響を及ぼす可能性は低いと考えられることから、貸借・売買いずれの場合も、自然死と同様に、原則として、これを告げなくてもよいことになっています(ガイドライン4(3))。
  3. 正しい。人の死に関する告知義務の対象となるのは、原則として過去3年以内に、①自然死以外の死が発生した場合、②特殊清掃等が行われる死が発覚した場合です。しかし、経過期間や死因に関わらず、買主・借主から事案の有無を問われた場合や、社会的影響の大きさから買主・借主が把握しておくべき特段の事情があると認識した場合には、宅地建物取引業者は売主・貸主・管理業者等に照会を行い、その結果判明した事実を伝える調査義務があります(ガイドライン4(4))。
  4. 正しい。人の死に関する告知は、亡くなった方やその遺族等の名誉及び生活の平穏に十分配慮し、これらを不当に侵害することのないようにする必要があることから、氏名、年齢、住所、家族構成や具体的な死の態様、発見状況等を告げる必要はありません(ガイドライン4(4))。
したがって適切なものの組合せは「ウ、エ」です。