賃貸借の終了(全12問中5問目)

No.5

破産と賃貸借に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
令和2年試験 問25
  1. 借主につき破産手続の開始が決定され、破産管財人が選任されると、賃主が賃料の支払を催告する相手方は、破産管財人となる。
  2. 借主につき破産手続の開始が決定され、破産管財人が選任された場合、破産管財人は、賃貸借契約を解除することができる。
  3. 借主につき破産手続の開始が決定されたことは、民法上は、貸主が賃貸借契約を解除する理由にならない。
  4. 貸主につき破産手続の開始が決定され、破産管財人が選任されると、借主は預け入れている敷金の額まで賃料の支払いを拒むことができる。

正解 4

解説

  1. 正しい。破産手続の開始が決定されると、借主の財産は破産財団となりその管理処分権は破産管財人に属します。したがって、貸主は破産管財人に対して支払催告をすることになります(破産法78条1項)。
  2. 正しい。賃貸借契約のような双務契約について、破産者およびその相手方が破産手続開始時においてその履行を完了していなければ、破産管財人は契約の解除または履行のいずれかを選択することができます。したがって、破産管財人は賃貸借契約の解除をすることができます(破産法53条1項)。
  3. 正しい。借主について破産手続の開始が決定されても、民法上は解除理由や解約申し入れの理由となりません。なお、破産手続の開始決定を解除事由とする特約を定めることがありますが、その有効性には裁判例は分かれています。
  4. [誤り]。敷金は賃貸借契約と建物明渡しを終了条件とする停止条件付き債権という性質があります。破産法では、破産者に停止条件付債権や将来債権を有する者は、後に相殺をするため、その債権額の限度において弁済額の寄託を請求することができます(破産法70条)。
    したがって、貸主について破産手続の開始が決定された場合、借主は敷金の額まで破産管財人に対して寄託を請求できます。これにより敷金が保全されます。貸主が破産した場合でも、借主は賃料支払いを拒むことはできません。
したがって誤っている記述は[4]です。