賃借権の承継と権利関係(全8問中1問目)

No.1

AがBに対して賃貸住宅(以下、「甲住宅」という。)を賃貸し、Bが居住している場合に関する以下の記述のうち、正しいものはいくつあるか。
  1. Aが甲住宅をCに売却しようとする場合、Bの承諾がなくとも売却することはできる。
  2. Aが甲住宅をCに売却しようとする場合、Aは、Bの承諾がなければ、AC間の合意で賃貸人の地位を移転させることはできない。
  3. Aが融資を受けて甲住宅を建築し、同建物及び敷地に、借入金を被担保債権とする抵当権が設定され、登記されている場合において、抵当権が実行され、Cが甲住宅を買受けた場合、抵当権設定登記後に甲住宅に入居したBはCの買受時から3か月以内に甲住宅を明渡す必要がある。
  4. BがAの同意を得て、賃借権をDに譲渡した場合、敷金に関するBの権利義務関係はDに承継される。
令和5年試験 問26
  1. 1つ
  2. 2つ
  3. 3つ
  4. 4つ

正解 1

解説

  1. 正しい。賃貸住宅のオーナーAは、賃借人Bの承諾がなくても当該物件を第三者に売却することができます。
  2. 誤り。不動産の賃借人が対抗要件を備えている場合に、当該不動産のオーナーチェンジがあったときは、賃貸人の地位は当然に新たな所有者に移転します。賃借人の承諾は不要です(民法605条の2第1項)。
  3. 誤り。3か月以内ではありません。対抗要件が具備されたのは、抵当権⇒建物賃貸借の順なので、抵当権のほうが優先されます。抵当権の実施により甲住宅を第三者が買い受けた場合、賃借権を対抗できない賃借人Bは甲住宅から立ち退く必要があります。ただし、次の入居先を探す期間を確保する目的で、買受けのときから6か月間は建物の明渡しが猶予されます(民法395条)。
  4. 誤り。賃借権が譲渡された場合、賃借人Bの敷金に関する権利義務は新賃借人には承継されません(最判昭53.12.22)。これに対して、オーナーチェンジのケースでは、敷金に関する権利義務が新所有者に承継されます(民法605条の2第4項)。
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したがって正しいものは「1つ」です。