証券化業務(全6問中1問目)

No.1

不動産証券化の仕組みに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
令和5年試験 問50
  1. 不動産証券化の仕組みでは、活動の実態を有しないペーパーカンパニーが器(ビークル)として利用される。
  2. 流動化型(資産流動化型)の証券化は、お金を集めてから投資対象が決まるタイプであり、はじめに投資資金がある場合に行われる不動産証券化の仕組みである。
  3. 投資家からみて、デットによる投資は、利息の支払や元本の償還においてエクイティに優先して安全性が高いことから、リターンの割合は低くなる。
  4. ノンリコースローンの場合には、特定の事業や資産以外は、当該ローン債権実現のための引き当て(責任財産)とはならない。

正解 2

解説

  1. 正しい。不動産証券化の仕組みでは、事業活動の実態を有さず、不動産の所有と証券の発行及び投資家への利益の配分など限定された管理活動だけを行う「器(ビークル)」が利用されます。ビークル(vehicle)は「乗り物」という意味で、利益を投資家に運ぶ媒体であることからこの名称で呼ばれています。このような特定の目的で設立される事業体を総称してSPV(Special Purpose Vehicle)といい、SPVのうち会社形態であるものをSPC(Special Purpose Company)といいます。
    不動産証券化において、ビークルを用いる理由は、①一定の条件を満たすことにより法人税の課税を受けずに利益を投資家に配分できる、②関係会社の倒産の影響がビークルが保有する不動産に及ばないようにする、③リスクとリターンの明確化などがあります。
  2. [誤り]。不動産証券化には、流動化型(資産流動化型)とファンド型の2つのタイプがあります。お金を集めてから、投資対象が決まるのはファンド型の特徴です。J-REITなどがファンド型の不動産証券化に該当します。
    流動化型(資産流動化型)
    最初から投資対象が決まっていて、その計画に基づいて投資家から資金を集める。投資期間が決まっており、投資家はビークルの解散により投下資金を回収する
    ファンド型
    まず投資家から資金を集めてから、投資対象を決める。投資期間は決まっておらず、投資家は証券を市場で譲渡することにより投下資金を回収する
  3. 正しい。デットによる投資とは、貸付金や社債など利息の支払いや元本の償還があるタイプの投資です。これらは利益の配分より優先されるため安全性が高い反面、リターンは利息に限られるため、ローリスクローリターンと言えます。一方、エクイティ(資本の提供)による投資は、リターンが安定しない反面、上手くいったときに得られるリターンは大きくなるという特性の違いがあります。
  4. 正しい。ノンリコースローンとは、債務不履行に陥った時の責任財産を特定の事業や資産に限定するローン形式をいいます。投資家からすれば投下資本を回収できないリスクが高まりますが、その分利息が高く設定されます。
したがって誤っている記述は[2]です。