賃貸借契約の管理(全18問中9問目)

No.9

未収賃料の回収、明渡しに関する次の記述のうち、不適切なものはどれか。
令和元年試験 問27
  1. 管理受託方式の管理業者が、貸主に代わって管理業者の名前で借主に賃料の請求をする行為は、弁護士法第72条(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)に抵触する可能性がある。
  2. サブリース方式による管理業者が、滞納者である借主の住所地を管轄する簡易裁判所に支払督促の申立てをし、これに対し借主が異議の申立てをしなかった場合、当該支払督促が確定判決と同一の効力を有する。
  3. 少額訴訟と支払督促は、いずれも簡易裁判所による法的手続であるが、相手方から異議が出された場合、少額訴訟は同じ裁判所で通常訴訟として審理が開始され、支払督促は請求額によっては地方裁判所で審理される。
  4. 公正証書による強制執行は、金銭の請求については執行可能であるが、建物明渡しについては執行ができない。

正解 2

解説

  1. 適切。個別の事情によりますが、貸主に代わって管理業者の名前で借主に対して賃料請求をすることは、法律事務を扱ったとして弁護士法に抵触する可能性があります。
  2. [不適切]。支払督促の申立てに対して異議申立てをしなかっただけでは、確定判決と同一の効力はありません。その後、債権者による仮執行宣言の申立てが必要です。また、支払督促の申立ては、債務者の住所地を所轄する簡易裁判所の書記官に対して行うのでこの点でも間違っています。
    なお、支払督促の流れは次のようになっています。債務者が異議を申し立てたときは通常の訴訟手続きに移行します。
    1. 債権者が、簡易裁判所の書記官に「支払督促の申立て」をする
    2. 債務者は、支払督促の送達を受けてから2週間以内に異議申立てができる
    3. 債務者からの異議がなかった場合、債権者は、簡易裁判所の書記官に「仮執行宣言の申立て」ができる
    4. 債務者は、仮執行宣言の申立てを付した支払督促の送達を受けてから2週間以内に異議申立てができる
    5. 債務者からの異議がなかった場合、支払督促は確定判決と同一の効力を有する
  3. 適切。訴訟額60万円以下のものが少額訴訟に該当し簡易裁判所で審理されますが、支払督促は140万円以下は簡易裁判所、140万円超は地方裁判所で審理されます。
  4. 適切。公正証書だけでは、訴訟による手続きが行われているわけではないため、建物明渡しという生活上の拠点を書面だけで失わせる強制力はないとされています。
したがって正しい記述は[2]です。