賃料・敷金等の一時金(全15問中3問目)

No.3

賃料に関する次の記述のうち、適切なものはどれか。
令和4年試験 問20
  1. 貸主が支払期限を知っている通常の場合、賃料債権は、5年の消滅時効に服する。
  2. 建物賃貸借契約における賃料は、建物使用の対価であるので、貸主は、借主が使用する敷地の対価を当然に別途請求することができる。
  3. 貸主が死亡し、その共同相続人が賃貸住宅を相続した場合、遺産分割までの賃料債権は、金銭債権として、相続財産となる。
  4. 借主が滞納賃料の一部を支払う場合であって、弁済充当の合意がないときは、支払時に貸主が指定した債務に充当され、借主はこれに従わなければならない。

正解 1

解説

  1. [適切]。賃料請求権は債権ですので、①権利を行使できることを知った時から5年、②権利を行使できるときから10年のいずれか早い時期に時効で消滅します(民法166条1項)。貸主が支払期限を知っているということは、賃料を請求できることを知っていることになるので、賃料債権は5年の消滅時効に服します。
  2. 不適切。建物賃貸借契約における賃料には、建物使用の対価だけでなく、敷地使用の対価も含まれるという考え方が一般的です。したがって、借主が使用する敷地の対価を当然に別途請求することは通常はできません。
  3. 不適切。被相続人が死亡時に有していた権利義務は、原則として法定相続人がその相続分に応じて承継します(民法899条)。したがって、賃料債権は遺産分割を経ることなく、相続開始時に各共同相続人に分割される形で承継されることとなります(最判平17.9.8)。金銭その他の可分債権のうち相続財産として遺産分割の対象となるのは、預貯金債権だけです。
  4. 不適切。当事者間で弁済の充当に関する合意がない場合は、まず弁済者が充当すべき債務を指定することができます。弁済者が指定していないときには、受領者が指定できます。このとき受領者の指定に反対する弁済者は、直ちに意義を述べることで受領者の指定を無効にすることができます(民法488条)。したがって、借主は貸主に優先して充当すべき債務を指定することができますし、貸主の指定が気に食わないときは異議を述べて従わないことができます。
したがって適切な記述は[1]です。