賃料・敷金等の一時金(全15問中4問目)

No.4

敷金に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
令和3年試験 問20
  1. 貸主は、建物明渡し後でなければ、敷金を未払賃料に充当することができない。
  2. 敷金は、賃貸借契約上の債務を担保するための金銭であるから、貸主との合意があっても賃貸借契約の締結後に預け入れることができない。
  3. 貸主が建物を借主に引き渡した後、第三者に当該建物を売却し、所有権移転登記を完了した場合、特段の事情がない限り、敷金に関する権利義務は当然に当該第三者に承継される。
  4. 賃貸借契約が終了し、建物が明け渡された後、借主が行方不明となったことにより、借主に対し敷金の充当の通知ができない場合、貸主は敷金を未払賃料や原状回復費用に充当することができない。

正解 3

解説

  1. 不適切。敷金は賃貸借契約に基づいて生じる賃借人の一切の債務を担保します。賃貸借契約期間中に生じた未払賃料にも充当することもできます(民法622条の2)。
  2. 不適切。敷金契約は賃貸借契約に付随する者ですがあくまで別個の契約ですので、貸主と借主で合意があれば賃貸借契約の締結後に敷金を預け入れることもできます(最判昭48.2.2)。
  3. [適切]。借主が建物賃貸借の対抗要件を備えている場合において、賃貸借の目的である建物が譲渡された場合、賃貸人たる地位とともに敷金の返還に係る債務も建物の新所有者に移転します(民法605条の2第4項)。
  4. 不適切。敷金の未払賃料への充当は敷金契約によって生じるものであり、相殺のように当事者の意思表示を必要としません(最判平14.3.28)。よって、借主が行方不明になったとしても、貸主は敷金を未払賃料や原状回復費用に充当することができます。
したがって適切な記述は[3]です。