賃料・敷金等の一時金(全15問中6問目)

No.6

敷金に関する次の記述のうち、誤っているものの組合せはどれか。
  1. 借主は、不払賃料額の弁済に敷金を充てるよう貸主に請求することはできない。
  2. 賃貸借契約継続中に敷金返還請求権が差し押えられた場合、貸主は、速やかに敷金相当額を差押債権者に支払わなければならない。
  3. 敷金は、原状回復とされている借主の毀損・汚損に対する損害賠償も担保する。
  4. 貸主Aが賃貸物件を第三者Bに譲渡する際、賃貸人たる地位をAに留保する旨、AB間で合意すれば、貸主の地位はAに留保され、Aは敷金返還義務を負う。
令和2年試験 問20
  1. ア、イ
  2. ア、ウ
  3. ウ、エ
  4. イ、エ

正解 4

解説

  1. 正しい。貸主は敷金を不払いの賃料債務の弁済に充当することができますが、借主側から賃料債務との相殺を請求することはできません(民法622条の2第2項)。
  2. 誤り。敷金返還請求権も債権として差押え可能ですが、当該請求権は賃貸借契約が終了し賃貸物件が明け渡されたときに発生します。よって、敷金返還請求権の発生していない賃貸借契約期間中は差押債権者に対して敷金の支払い義務はありません。
    なお、敷金契約は賃貸借契約とは別個の契約で、賃貸借に基づいて生ずる賃借人の一切の債務を担保する目的がありますから、建物明渡し時に未払賃料があれば敷金契約に基づいてその未払賃料に敷金が充当され、敷金の範囲で賃料債権は当然に消滅するとされているので、賃貸人は敷金のうち残った部分の金額を差押債権者に支払うことになります。
  3. 正しい。敷金は「賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭」と定義されています(民法622条の2第1項)。よって、未払賃料だけでなく、原状回復に要する費用、損害賠償債務等をも担保します。
  4. 誤り。賃貸物件の譲渡の際に、賃貸人の地位を旧所有者に留保するためには、①譲渡人と譲受人との合意、②その物件を譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意の2点が必要です。①の合意だけでは貸主の地位の留保は効果を生じません(民法605条の2第2項)。
したがって誤っているものの組合せは「イ、エ」です。