賃貸借の終了(全14問中3問目)

No.3

令和4年4月1日に締結された賃貸借契約の終了に関する次の記述のうち、適切なものの組合せはどれか。
  1. 賃貸人と賃借人に紛争があり、賃借人があらかじめ賃料の支払を拒絶する意思を書面にて明らかにしており、実際に賃料の滞納が3か月に及ぶ場合、賃貸人は催告することなく賃貸借契約を解除することができる。
  2. 賃料支払義務は賃借人の中核的義務である以上、1回でも賃料不払があれば、賃貸人との間の信頼関係が破壊されたとして、賃貸人は賃貸借契約を解除することができる。
  3. 賃貸借契約が解除されると、解除の遡及効により契約当初に遡り解除の効果が生ずる。
  4. 家賃債務保証業者が連帯保証人となっている場合において、当該業者が賃借人による賃料不払に関して保証債務を履行していても、信頼関係が破壊されたとして、賃貸人による賃貸借契約の解除が認められる場合がある。
令和5年試験 問25
  1. ア、イ
  2. イ、ウ
  3. ウ、エ
  4. ア、エ

正解 4

解説

  1. 適切。債務者が、債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に示したときは、債権者は無催告で契約を解除できます(民法542条)。賃貸借契約はお互いの信頼関係を基礎とする継続的な契約なので、少しの債務不履行では契約解除できないことになっています。しかし、一般的に賃料の不払いが3カ月続いたときには信頼関係が破壊されたと評価されるため、賃貸借契約の解除が可能です。
  2. 不適切。賃貸借契約は当事者間の信頼関係に基づいた継続的な契約であり、解除により賃借人は住居等を失う等の重大な効果が生じることから、賃貸借契約を債務不履行に基づき解除することは、信頼性を破壊するような事情がなければできません(最判昭39.7.28)。賃料の不払いは債務不履行に当たり契約解除の事由となりますが、1回分の賃料不払いでは信頼関係が破壊されたと評価されないため、賃貸借契約を解除することはできません(最判昭43.11.21)。
  3. 不適切。賃貸借契約が解除された場合には、その解除は将来に向かってのみその効力を生じます。遡及効はないため、契約当初に遡って解除の効果が生ずることはありません(民法620条)。
  4. 適切。家賃債務保証業者が賃借人による賃料不払に関して保証債務を履行したとしても、賃借人が賃貸人に賃料支払い義務を果たしていないという事実は変わりません。したがって、信頼関係が破壊されたとして、賃貸人による賃貸借契約の解除が認められる場合があります(最判平26.6.26)。
したがって適切なものの組合せは「ア、エ」です。