賃貸不動産経営管理士過去問題 令和6年試験 問18

問18

賃借人の滞納賃料を回収するための法的手続に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  1. 賃借人が賃料を滞納した場合、賃貸借契約書が執行認諾文言付きの公正証書により作成されているときは、賃貸人は、改めて訴訟を提起して確定判決を得ることなく、滞納賃料の請求について強制執行をすることができる。
  2. 期間内に滞納賃料の支払がない場合には期間の経過をもって賃貸借契約を解除する旨の通知は、内容証明郵便により行わなければ、賃借人が滞納賃料を支払わないまま所定の期間が経過しても、契約解除の効力は生じない。
  3. 滞納賃料の支払督促に対しては異議の申立てがなくても、当該支払督促について賃貸人が行った仮執行宣言の申立てに際し、賃借人が2週間以内に異議の申立てをすれば、通常の民事訴訟の手続に移行する。
  4. 既にA簡易裁判所において同一年内に10回の少額訴訟を提起している賃貸人が、同一年内に初めてB簡易裁判所に対し、その管轄に属する滞納賃料の支払請求訴訟を提起する場合には、少額訴訟を選択することができる。

正解 2

問題難易度
肢115.4%
肢252.8%
肢34.2%
肢427.6%

解説

  1. 正しい。賃貸借契約書が、執行認諾文言付きの公正証書により作成されている場合、賃貸人は公正証書を債務名義として、滞納賃料の回収のために強制執行を行うことができます(民執法22条5号)。改めて訴訟を提起して確定判決を得る必要はありません。
    ※『債務者が直ちに強制執行に服する』旨の陳述が記載されている公正証書で、執行証書とも呼ばれます。
  2. [誤り]。内容証明郵便で行う必要はありません。意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生じるので、普通郵便や直接書面を手渡しする方法でも相手に到達すれば解除予告付き催告の効力は生じます。内容証明郵便を利用するのは、通知内容と日付について証拠が必要な場合です。
  3. 正しい。支払督促の送達を受けた者は、2週間以内に異議の申立てができます。異議の申立てがなかった場合、債権者により仮執行宣言の申立てが行われますが、仮執行宣言を受けた者は、2週間以内に異議の申立てができます(民訴法393条)。上記のいずれかの異議の申立てが行われた場合、裁判所に訴えの提起があったものとみなし、通常の民事訴訟の手続に移行します(民訴法395条)。
  4. 正しい。1人が少額訴訟を提起できるのは、同一の簡易裁判所に対して年10回までです(民訴規則223条)。このため、年10回行っているA簡易裁判所に対して少額訴訟できません。しかし、まだ今年初めてのB簡易裁判所に対しては少額訴訟を提起することができます。
したがって誤っている記述は[2]です。